禿生海峡冬景色

山形在住【食いしん坊中年男子】の平穏な日常に突如襲いかかる妻や愛猫の嘔吐!そしてその内容物について…

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セックスはしたい

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『結婚しなくていいですか。』益田ミリ著/幻冬社刊

以前から、20代後半~40代の独身女性が持つ独特の悲愴感…本人は現状にそれなり満足し、誰に迷惑かけるでもなく自立しているのに、親類や友人からの「結婚適齢期なんだから、そろそろ」というプレッシャーや、世間に蔓延する恋愛至上主義的な価値観、社交辞令の中に見隠れするトゲある言動の数々…それらに深く傷つき、しかし強く歩んでゆく姿に魅力を感じていた。

もしかしたら若い女性が、少しくたびれた“熟年オヤジ”の後姿に可愛さを見い出すような…そんな感覚に近いのかもしれない。ボクにとっては、公園のベンチで肩を落としハトさえも近づかない熟年オヤジより、駅のホームで両腕に大荷物を抱えたまま、ノースリーブから伸びるムササビのような二の腕をフルフルさせつつ誰が見るでもない化粧直しに勤しむ妙齢女性の方に、胸がキュンとなってしまうのだ。

ただ、飲み会で泥酔して乱れるとか、深夜ベッドで号泣する…みたいな、いかにも「悲しんでます」な漫画的表現には惹かれない。この作品のような、真顔で暮らすクロックワークな日常の中でフト眉をしかめたり、心が晴れたりという…その些細な明暗に読んでるこっちも心を動かされる。

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主人公は、カフェの雇われ店長「すーちゃん」35歳。すーちゃんが通い始めたヨガ教室で再会したのが、学生時代バイト先の社員だったOL「さわ子さん」もうすぐ40歳。2人を軸に物語は進む。

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真顔でいきなり「セックスはしたい」とかモノローグつけられると、違和感を覚えたりするけど、あくまでそれは“漫画だから”であって、実際のリアルな生活の中ではいたって日常的な出来事ではないだろうか?こういう淡々としたペースが、登場人物と読んでる自分との距離を埋めてゆく。

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自分の回りで次々起こる、結婚や妊娠といった所謂“普通”とされる出来事…それによって友人知人に抱く距離感や違和感。

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さわ子さんは、別にいつもセックス絡みの事ばかり考えているキャラクターではないけど、やたらと印象的なので…というか、恐らく同僚などに「そういうこと考えてなさそう」と思われているようなキャラクターなのだろうけど、そういう人だからこそ!というあたりが妙にリアル。

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若い時とちがって、良くも悪くも内心と関係なくコミュニケーションを円滑に行ってしまう自分がいる。

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でも、やっぱり違和感。

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子供が産まれたら「もうすぐ別のあたしになる」と感じながら「今のあたしで会っておきたかった」と考えていた、すーちゃんの友人まいちゃん。

こういう感覚は新鮮。今までボクは「年賀状に自分の子供の写真貼って送られても…」と、そういう事に対して批判的な気持ちが強かったけれど、こういう「でも、会っておきたかったんだ」、年賀状でいえばおそらく「でも、見てもらいたかったんだ」という心情が…いやいや、もちろん送ってくる人の多くはそんな風に考えていないだろうけど、そんな気持ちもあるんだという事にちょっと驚いてしまった。もし、そんな風に思って送ってきてくれる人がいるなら…もちろん受け入れるだろう

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さわ子さん家は3人家族、寝たきりで自分の娘すら忘れてしまった祖母と、そんな親をひとりで介護するお母さん。物語の終盤、さわ子さん宅へ食事に招かれたすーちゃんが発した一言に、さわ子さん母娘が一瞬固まる。離れて暮らす兄家族からも“無いもの”のように扱われている祖母に「挨拶したい」と言ってくれたすーちゃん。この後、すごく母娘が喜ぶとか涙するような反応はない、ただこの一コマだけ一瞬固まっただけ。挨拶して、食事して帰るだけ。

でも、ヨガで偶然再会してたまに一緒にお茶するくらいの友達だった2人、いつも別れ際は「じゃ、また来週」と手を振っていたすーちゃん達だが、この日はさわ子さんの口から「また来てね、絶対」という言葉が溢れる。

何か胸にあたたかいものを残し、物語はそのペースを崩さず淡々と終わる。いや、我々の日常が終わらないように、この物語も“次のページ”が無かっただけで終わってはいないのだろう…一度本を閉じて深呼吸すると、何となく又1ページ目から読み出してしまった。



 
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  1. 2009/08/07(金) 17:17:17|
  2. 感想文
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4

コメント

これいい~

この本いいですよね!
不倫してたりとか絵柄と同じように淡々とすすむ中で意外とドラマがあるの。
でも切実すぎて同性としては辛くなったりする…。
  1. 2009/08/07(金) 18:11:03 |
  2. URL |
  3. えびのにぎり #-
  4. [ 編集]

画風が絵本バージョンの和田誠の絵みたいでいいですね。きわどさが見え隠れする内容とうまく中和してイノセントなかんじに読める!

ところで

> ムササビのような二の腕をフルフルさせつつ

ムササビのような二の腕ってどんなのか想像がつかなくて困ってます。体と腕がマントみたいに繋がってるのかなとか・・・けっこうかわいいじゃないすか!
  1. 2009/08/07(金) 23:44:07 |
  2. URL |
  3. 晴天 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

これ読んだよ。

もう結構前だけど。かなり身につまされつつ…。
さわ子さん絡みのエピソードは特に。
読み返すのが怖い本です。人に読んだと伝えたり、薦めたりするのも。

最近またつらつら考えてました。
答えは出てるんだけど、うまく説明できる自信はない。
  1. 2009/08/08(土) 14:56:30 |
  2. URL |
  3. はたぼ #O1JZGL.M
  4. [ 編集]

>えびのにぎりさん
不倫のエピソードは無かったような…益田ミリさんの著作には、似た雰囲気の作品が結構あるみたいなので、別のお話なのかも~ボクはまだコレしか読んでないので、見かけたら手にしてみたいと思っております。

>晴天さん
そうそう、和田誠と花くまゆうさくを足したような…もちろんいい意味で。ムササビは、タユンタユンした感じですね…もちろん嫌いではありません。

>はたぼさん
そっかあ…なんか、しかしそれはビックリだね。はたぼちゃんが、この日記を目にした時どんなにギョッとしたかとか考えるとアレだけど、そっかあ…いや、う~ん
  1. 2009/08/10(月) 12:08:51 |
  2. URL |
  3. 禿生@管理人 #3un.pJ2M
  4. [ 編集]

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