
そもそも、うちの夫婦は連続ドラマを見ない…2時間で終わる映画ならともかく、1週間も続きを知ることのできない連続ドラマを毎週毎週待ち続けるなんて、マゾ行為以外の何ものでもないとさえ思ってるフシがある。そんな我々が『すいか』というTVドラマにハマった…と言っても2003年に放送されていたものなので、当然リアルタイムじゃなくDVDレンタルでだけど…妻がレンタル屋で「本田さんちの奥さんが、コレおもしろいって言ってたんだけど…見てみようかなあ?」と手にした時は「続きもの?借りるならとりあえず1本にしときなね、1本!」と冷淡に言い放ったボクだったが、見終わった途端自分で返却しに行き、ついでに残り全部を借りて帰宅した。
出演しているのは、小林聡美、ともさかりえ、市川実日子、朝丘ルリ子、高橋克実 etc...作品の雰囲気としては、コメディ色の強い『カモメ食堂』といったところか?そういえば脇役としてカモメに出ていた片桐はいりが“マジシャンに憧れる女刑事”、もたいまさこも“BAR泥船のママ”の役で作品を通して出演している。舞台は古びた食事付きの下宿、大家である長期旅行中の父親に変わって管理人をしている市川実日子と、住人であるエロ漫画家のともさかりえ、大学教授の朝丘ルリ子達のもとに自分があまりに平凡なOLである事に嫌気のさした小林聡美が転がり込んでくる所から物語が始まる。
ボクがこのドラマで特に気に入ったのは、物語が変に波乱万丈…っていうか、ドキドキしたり無理にハラハラさせられたりする展開がなく安心して見ていられるところである。10話とか12話というスペースの中で、次回の視聴率を稼ぐ為だけに善人が殺されたり、ヒロインが乱暴されたり…と感情を引っ掻き回されるだけの連続ドラマはウンザリだし、そんなの見ても疲れるだけだ。
基本的に1話で1つのエピソードにケリがつき、市川実日子の父親への手紙が語りとして入って、毎回なんとなく朗らかな気持ちでエンディングを聞くことができる。放送時の視聴率はイマイチだったらしいが、日本のTV番組制作者に送られる最高の権威といわれるギャラクシー賞を筆頭に、ATP賞、向田邦子賞を受賞…それらを受けシナリオ集やDVDも発売になり、こうして放送から3年近くたった今でもボク等のようにハマっている人間がいるってわけだ。
小林聡美の美人でも不細工でもない中途半端さに説得力を感じ(美人オーラを醸し出していたカモメの時とは違い、この時は本当にドヨンとした役柄を演じ切っている)、ともさかりえの顔をグチャグチャにしての泣きの演技に引き込まれ(毎回のように泣くのだが、毎回ちゃんと違う泣き方をしているのがスゴイ)、市川実日子の持つ変な空気に脱力し、朝丘ルリ子の揺るぎない言葉の数々…「アタシみたいなのが居てもいいですかねえ?」と弱々しく問いかける小林聡美に「居てよし!」と真顔で答える姿にはグッときたっけ。そういえば、小泉今日子が、脇役ながら全編を通して逃亡者として物語に絡み、基本的に緩い作品の中で陰影を作り出している。
多分、ボク等と同じようにハラハラドキドキするTVドラマについていけない…でも、映画以外の連続物にもちょっとハマってみたいと思ってる人は多いんじゃなかろうか?『24』みたいな外国の連続ドラマや韓流ドラマにハマってる人達を、ちょっと羨ましく思いながらも触手が動かずにいる人も多いんじゃないだろうか?今度レンタル屋に行く機会があったら、ちょっと『すいか』のDVD探してみ?主要登場人物が、大きな不幸に見舞われたり、死んだりしないから!大恋愛どころかキスシーンすらないぞ!試しに1枚借りて見てみるがいいですよ!
書き忘れたので追記:食堂での皆揃っての食事シーンが毎回のようにあるんだけど、これが素晴らしい!おにぎり!スイカ!カレーライス!お茶!そうめん!松茸!梅干し!ごはん!食卓を囲むことの尊さ、そしてそれは永遠ではないのだという儚さ…登場人物のセリフとしては出てこないが「あの時、皆で食べた○○おいしかったね」という思い出が、視聴者の心に植え付けられる演出にまんまと引っ掛かってしまったってのは、ボクが人一倍食いしん坊だから…ってわけではないと思いたい。